こわいだろ、これ。
パネェ
- 作者: ウィリアム・ゴールディング,William Golding,平井正穂
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1975/03/30
- メディア: 文庫
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単純な2項対立の話ではないところが名作たるゆえんなのかと思った。
勧善懲悪なんていう単純なものでもない。
悪側(おかしな表現ではあるが…)のリーダーであるジャックもロジャーというより強烈な人物との複雑な関係が見え隠れするし。
ラーフもピギーもサイモン殺しの時は狂っていたし。
ラーフは結局ジャックに勝利したわけではない。
エリック・サムの双子もラーフの隠れている場所を教えているらしいし。
いろいろ考えた結果、本来「無垢」「純粋」である少年達が主人公であることがポイントなんだな、と思った。
読後はなんだかすっきりしなかった。
でもすごく怖くなった。
それだけ人間というものは複雑怪奇なんだろうし、こういう書き方をすることでよりリアルに人間を描けているんだろうな。
この作品に違和感を感じるのは、普段読んでいるものが軽いものなんだという何よりの証ですね。
「いや、違うんだ、あの獣のことじゃないんだ……ぼくがいいたいのは……あの連中がやっているように、一切を無茶苦茶にしているものは、いったい何かということなんだ。」
生前のピギー氏の深遠なるお言葉です。